マンゴー通信 – ヨーガやインド、心と身体の健康などに関すること。 – 友永ヨーガ学院
18.11.30
138号
友永乾史
(友永ヨーガ学院理事、マンゴー通信編集長)


What's Mango Express?~マンゴー通信のご紹介~

 ただひたすらマンゴーを食べるときのようにヨーガを味わって欲しい、インド原産のマンゴーのように多くの人に愛されたい、そんな気持ちで書いています。ヨーガやインド、心と身体の健康などに関することをテーマにほぼ毎週アップします。

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第138号 日本のヨーガ(10)


「日本のヨーガ」というタイトルでずらずらと思いつくまま書いて来ました。ヨーガの世界でも、新しいもの信仰が過ぎるのでは?と思ったところが発端でした。パワーヨガ、ホットヨガ、○○ヨガ。海外からいろいろなヨーガが入って来ましたが、日本で私たちの生活の中に溶け込んできたヨーガ的な毎日の過ごし方をもう少し大切にしたほうが、よりヨーガから得る果実を得やすいのではないか。そう考えたのでした。そのようなヨガは、まず怪我が多いのも問題と考えました。

 

怪我については、かなりの確率で日本の人は、より自分を追い詰める方向にあるのが大きな原因と思います。「無理しないで」、「ご自分の気持ちいい範囲で」と声をかけても、大勢は、「少し無理をした方が効くのではないか」、「ほか人並みにできていないとはずかしい」、あるいは、「わたしはこれくらできるはずだ」など、快適さから少しオーバーしたところまで筋肉を伸ばし、関節に負荷をかけすぎがちです。この自分を追い詰めてしまう力の源がどこにあるのかはまた別の機会に書きたいと思いますが、とにかく、そういったベクトルが日本に育った人の心に働きやすいということは納得いただける方が多いと思います。

 

お金が幸せになるためのものであることを忘れると幸せになれないように、アーサナが心を整えるものであることを忘れると、心が整わない。自分の心を追い詰めても、そこにヨーガから得られる果実はない。当たり前の話ですが、日本に住む私たち、特に昭和に生まれた世代はもう一度ここを理解する必要があると思います。現在の学校教育でもその傾向は残っていますが、遡るほどその色は濃くなります。無理をするのは美談であり、その手前で止めてしまうのは醜聞なのです。

 

ヨーガは精神論ではなく、具体的な方法論をもった、再現性の高い科学と言えます。多少の修正はあると思いますが、これから先、医学と科学からより大きな信任を得て行くでしょう。日本の悪しき個の尊厳の否定である、皆が我慢しているから、頑張っているから、私も我慢して頑張らなければならないという理屈はヨーガでは通用しません。アーサナの指導者もここをよくふまえてきめの細やかな誘導を心がけることが、生徒さんと長く深い信頼関係を築くために大切と思います。

 

痛かったり、寒かったり、不安だったり、怖かったりという感覚、感情を、まず認めて、それに対応することはとても大切です。少しでもそういった反応を認めることができたら、「少しくらいは耐えないと」と思わないで、それにふさわしい対応をとることで、身体は落ち着いて心も落ち着き、そのような感覚や感情が収まります。それを無視していると、いつまでも心はざわついたままでいます。

 

水垢離、寒げいこ、座禅、アーサナなどは、冷たい、寒い、眠い、動きたい、こういった外界からの刺激に自分がどう反応をするのかを眺めて、そして、どのように、それをコントロールできるのかを訓練として行うものです。その最中はもちろん、そうした感覚や感情から離れておきますが、訓練が終わったら、きちんと自分のケアをしてあげないといけません。そして、その最中においても、無理はしてはいけません。自分がやりたい、成功させたいという範囲で行うものです。こうした修行法は極端な状態においての心の反応を知ることで、日常に起こるいろいろな出来事に対処をできるよう、心を育てていくことができるのが素晴らしいところです。

 

心が育ってくると、人がどうであれ、あまり気にならなくなると思います。自分を快適に過ごすことだけが、自分の、そして他の人の心も平和にすることを知るからです。

 

アントニン・レーモンドのデザインの旧井上房一郎邸に出かけました。写真はその茶室です。座るだけで心が静まってきます。