ゴームク巡礼記 その8
- 16 時間前
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高地ハイにもマントラを
< その7から続く >
食堂のテントで、熱々のポテトとチャイ、そして、感涙後のマシンガントークで身体はぽかぽかでした。
チャイの甘味でほっと一息して、ではテントへ案内します・・と、ガイドのアロックさんが声をかけてくれました。
すると、到着したときとは打って変わっての、山からの冷たい風。
汗が一気に冷えて、体温を奪い取られてしまいました。
奥歯ががたがたいうほどの寒さに、急いでリュックからダウンを取り出したのでした。
案内されたテントには、すでにケイさんが入っていました。

テントの中は、それまでの雄大さから、きゅーっと狭い空間でした。
黒い寝床の下は、防寒用のシートと、硬い地面。
告白しますと、わたくし、テント泊はほぼ初めて。
正確には二度目。
二十歳のころに一度経験があるだけです。
イギリスの牧草地のテントで、しかも一人で広々でした。
今回は、寝袋が二つ、ぴったり入るだけの面積に、四角「錐」。
狭い、硬い、ピラミッドです。

それでも、わたくしは気分が高揚したそのまま、ケイさんに、「普段から修験の修行をされているから、さすがですね!」と声をかけると、ケイさんはいつもと変わらない声で、「山の上に登ったら、皆さんで、旅に入る前から教えてもらったマントラを唱えましょう」と、答えてくれました。
わたくし、自分の疲れを覆い隠そうと、少しハイになっていました。
ケイさんはそれを見越して、そうお伝えくださったように聞こえました。
少しずつ気持ちが落ち着いてきました。
テントと、お手洗いのテントと、今日の宿の理解が進んだところで、皆さんでわいわい夕食を済ませて再びテントに入りました。
皆さんは疲労がありながらの、だからこその、テンションが少し高め状態。
明日はいよいよゴームクです。
ケイさんの言葉もあり、「眠れない人も出るかもしれない」そう思ったので、眠れなくても、ゆっくりマントラを唱えましょうと食事の最後に挨拶をしました。
ここまで来られたのも、こうして皆無事にご飯を食べられるのも、シヴァの神さまのおかげ。
「オーム ナマ シヴァーヤ」と繰り返しましょうとお伝えしました。
そして、ここまで皆で練習してきたマントラ、シヴァの神さまに庇護をお願いするマントラを唱えて散会しました。
テントに戻ったわたくしは、体温を奪われた後の用心さと、自分は寒がりであるとの思い込みで、持ってきた温かそうなものを全部着込みました。
ダウンに、ももひきの厚いもの、そして、バラクラバ(銀行強盗がかぶりそうな目空き帽)、すべてを着用して寝袋に入り込みました。
きっちり寝袋二つ分のテントの中、まだ少し高揚が残っている心のまま、ケイさんにおやすみを言って、入眠を試みました。
寝袋に入って横になると、外のテントの中の声が、そのまま聞こえてきます。
そう、テントは雨風はしのげますが、声を遮るものではないのでした。
日本語と、ヒンディーと、さまざまな言葉が飛び込んできます。
「眠れるかなー?」と思ったら、「暑い・・」と身体が言っています。
そう、わたくしは着込み過ぎたのでした。
寝袋の性能がこんなによいものだとはつゆ知らず、汗をかかんばかりになりました。
寝入り鼻かも知れない隣のケイさんを起こしてはいけないと、バラクラバだけは取ったものの、まだまだ暑い。
気を使いながら、寝袋のファスナーを開けようとしますが、なかなか取っ手が見つからない。
そうこうしているうちにのどが渇いて・・
とやっているうちに、交感神経はずっと高止まり。
すなわち、思考が沸き上がるリズムが速い。
しかも、それらは、おしなべて現状を悲観的に見るものばかり。
そこに、外からの、それぞれの人の言葉が飛び込んできます。
目をつむった暗黒に、自分の考えと人の考えが交互に、空中戦さ中の空のように行き交います。
わたくしは、それらの弾丸が行き交う空そのものを震わすように、ずっと「オームー ナマァ シヴァァーヤー」と唱えるのでした。
あるいは、脳はそんなによく眠れなかったのかも知れません。
でも、身体には筋肉痛も、重さもありませんでした。
テントの外が白み始め、ケイさんが瞑想をはじめ、しばらくしてわたくしもお手洗いに立ちました。
ガスが出て、視界はそこまで開けていませんが、雨も雪も降らず、風もそこまで強くありません。
次々と起きてくるチームの皆さんは、互いに挨拶を交わし、微笑み、もくもくと支度を整えていました。
いよいよ、ゴームクへの出発の朝です。
< その9へ続く >

