マンゴー通信 – ヨーガやインド、心と身体の健康などに関すること。 – 友永ヨーガ学院
18.11.24
137号
友永乾史
(友永ヨーガ学院理事、マンゴー通信編集長)


What's Mango Express?~マンゴー通信のご紹介~

 ただひたすらマンゴーを食べるときのようにヨーガを味わって欲しい、インド原産のマンゴーのように多くの人に愛されたい、そんな気持ちで書いています。ヨーガやインド、心と身体の健康などに関することをテーマにほぼ毎週アップします。

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第137号 日本のヨーガ(9)


先週はこんなことを書きました。「権力も、お金も、この命も、何もかも、一時的にあなたに与えられているにすぎないという諦観を肚で理解することです」!よくまあ、説教くさいことを書いてしまったと思い、窮屈に感じていなくもなかったのですが、でも、やはり間違いはないので訂正せずに残しておこうと放っておきました。スワミジたちはよく、「人は何も持たずに生まれてきて、何も持たずに還っていく」とお話しされます。この話が念頭にあったのでした。すると、ちょうどこのシンプルな事実を忘れると大変なことになるという例が今、新聞を賑わせています。

 

日産とルノー、三菱自動車を率いるゴーンさんが、5年間で約50億円を帳簿に記載せずにいたとのこと。(ゴーンさんの報酬は30万人の会社を率いる経営者として、他と比べてそこまで突出して多いかというと、そうではないのだと、これまた記事で知りましたが)帳簿に載せる必要があったのかどうか。それはこれから裁判の場で明らかになることでしょうが、同じように社会的な地位があり、収入の大きな方々が、同じように法を犯してまでさらに何かを手に入れたいとする例が後を絶ちません。サウジアラビアの王子しかり、どのかの国のどこかの大臣しかり。

 

こうした例は、インドとヨーガから教えられた一つのことを思い出させます。それは、どんなに大きな富と権力を握った王様でも、それに満足せず、まだ欲しがっていたら、それは乞食と同じ。どんなに貧しい乞食でも、自分の境遇に満足して、他に分け与えることを知っていたら王様と同じ。「足るを知ること」(サントーシャ)を伝えるのによく引き合いに出されます。

 

古くから伝わるこうした話がまだ力を持つのは、私たちの持つ心とういものの貪欲さをあらためて浮き彫りにします。そして、それをマネージする大変さも。悪いとわかっていても、ついつい手を出してしまう。お金や権力、色恋、そして、お酒や麻薬。広く言えば、身体に悪いと知りつつ食べ過ぎてしまい健康を害してしまうのも、この心の働きです。いつの世も、人は心で失敗してきた。こうした心の働きをどう静めるか。ヨーガはその試みの集大成といえるでしょう。その静め方として、正座をするとか、深呼吸をするとか、仕事に精を出すとか、日本には、生活の中に生きた知恵があったと以前に書きました。

 

米国のある建築家(*1)はこう語ったそうです。「日本以外のどこの文明が、美しくすることは、すなわち不要なものを捨て去ることであると示しただろうか」確かに和室に家具は似合いません。そこに入ると心まで整ってしまう。そんな部屋が日本にはあります。逆に西洋の部屋に家具がないとがらんと寂しく見えてしまいます。だからでしょうか、際限なくモノが増えて行ってしまうことが多いように思います。そのようにならないための環境づくりもヨーガのうちだとしたら、日本に住む私たちがどのように環境を整えたらよいのか。そのお手本は外でなく内にあるのではないでしょうか。「日本のヨーガ」でお伝えしたかったのは、このことです。

 

(*1)フランク・ロイド・ライトの下で働いた、チェコ生まれ米国籍だったアントニン・レーモンド。調べてみる意外とヨーガと私たちの教室のある杉並区ともご縁あり。インド・ポンディチェリーのシュリ・オーロビンド・アシュラムの宿舎や、善福寺の東京女子大学の本館などを設計した。三鷹のICUの図書館もこの人だそうです。

 

ポンディチェリー、シュリ・オーロビンドのアシュラム。風のとおる涼しそうな建物。「インド初のモダニズム建築」として有名なようで、たくさんの写真がさまざまなサイトにアップされています。