マンゴー通信 – ヨーガやインド、心と身体の健康などに関すること。 – 友永ヨーガ学院
18.11.2
134号
友永乾史
(友永ヨーガ学院理事、マンゴー通信編集長)


What's Mango Express?~マンゴー通信のご紹介~

 ただひたすらマンゴーを食べるときのようにヨーガを味わって欲しい、インド原産のマンゴーのように多くの人に愛されたい、そんな気持ちで書いています。ヨーガやインド、心と身体の健康などに関することをテーマにほぼ毎週アップします。

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第134号 日本のヨーガ(6)


ソニーに関わる(関わったことのある)方には、なんとも不快な思いをさせるお話しを二話に渡ってアップしました。大変失礼いたしました。好きなブランドだったこと、そして、日本企業を代表する企業だったことから、アップルに対するひとつの比喩的な存在としてお名前を挙げさせていただきました。この世の物事は、いつもアナログに、前のことが次のことを引き起こします。時代の変化によって、強みが弱みになり、逆も起こります。だから、今現実に存在するソニーという企業体にとっては、今ある形が今の時点でのベストという考え方が正しいと思います。これからどんな風に「人々の心を豊かにすることに貢献」(*1)されていかれるのか楽しみにしたいと思います。

 

なぜ、日本には、「ヨーガは、仏教とともに日本の生活に根を下ろし、それを私たちのご先祖さまは、ずっとヨーガと知らずに、躾として、あるいは技としてよく身につけて」こられたのか。「瞑想的な時間を常に過ごせるよう、人と人のお互いに対する配慮が行き届いて」そして、「身体の構え方や運び方、つまるところ、心の使い方が洗練され」てきたのか。

 

一つは、やはり島国、というが大きいのかなと思います。大陸では、天災や飢饉という最悪の事態が起きたときは、どこかへ移動できる。沿岸の漁民を除いて航海の術を持たなかった大勢の日本人は、何がおこっても、ほとんどが一所懸命、自分の土地にいるしかなかった。そこで生活の質を高めるしかない。そして、火山国であるということ。火山の噴火や地震、津波が周期的にやってくる日本には、一切皆苦という言葉がしみじみ染みたのだと思う。だからこそ、いろいろな工夫があった。手先の器用さ、モノを最期まで大事にする姿勢、人の気配を読み、コトを荒立てない気性、そういったものが醸し出されて来た。そこに、仏教の教えがすっと染みこんだ。国土と資源が限られていた中で、生活の質を上げていくには、精神的な方向へしか進歩のしようがないという話かも知れません。

 

でも、それこそがヨーガの目指すもの。モノやコトに本当の快楽はなく、心の静寂の内に、妙なるものを感じるその瞬間に、圧倒的な不動の快楽がある。そこに近いところに、私たちのご先祖さまたちはいたのではないでしょうか。そして、それを味わうための作法、技術が、生活に染み込んでいる。禅の庭や、仏像という装置がその名残でしょう。

 

その境地とは、「頭の中、胸の内、肚の底を空にして」、「肩の力を抜き」、「肚をすわらせれ」ば、どんな困難にも打ち勝てるというもの。これはまさにバガヴァッド・ギーターの言わんとするところそのもの。これを覚えるには、武家では、男は武道、女は茶道や華道を身につけること、商家では三方よしという商いそのものを身につけること。日常の生活に道を見つけてそこを歩むという考え方は、そのままカルマ・ヨーガに通じます。

 

職人も仕事そのものに自分を磨く意気込みがありました。段取りから一つ一つの作業、そして最後の掃除に至るまでよく観察できる目、集中できてかつ疲れない身体へと鍛え、日々整えていないと、とても仕事にはなりません。そこに至るには相当の修練が必要です。農家でも同様に、百姓の名のとおり、たくさんのことを身につけなければならなかった。それを労働でなく修行ととらえる。精神論とともに、身につけることのできる具体的な技術があった。そして、そういった修行を見守る師がいた。こういった集団と社会の底流に、釈迦が修行をした環境にあったヨーガの香りがしないでしょうか。

 

(*1 は2018年-2020年 ソニー株式会社中期経営方針から http://bit.ly/2SDS343)

 

東大寺南大門の定覚、湛慶作の吽形像 慶派は技術を継承して互いに高め合ったと聞きます