|
御苑リトリートはその名のとおり、訪れた人が『リトリート』、自分を癒すことができる場所にしたいというデザインコンセプトで内装が進んでいます。御苑の緑が窓いっぱいに広がっているわけですから、窓を開け放つだけでも、十分な癒し効果を感じることができます。今はもう蝉の声は鳴りを潜め、秋の虫が鳴いています。木々は夏の日でむっと湿った気を放出して、もう薄く黄色に乾燥して見える葉も見えます。そんな季節の移り変わりをこの準備の期間で感じることができます。
教室全体のデザインを考えるときに、この緑をどのようにうまく室内に取り込むことができるかが、悩みどころでした。緑はただ見るだけでも気持ちが良いですが、その匂いは風に乗って鼻腔に広がるものですし、風で葉が裏返り、枝がかすれ、幹が揺れて音のうねりとなって私たちに届くとさらに木々との親密度が高まります。
東京で暮らしていると、そんな緑を感じることはとても贅沢なことです。そんな贅沢を心行くまで味わってもらおうと、教室の四方を開けてレッスンできるように風の通り道を考えて、レイアウトしました。壁を作ってしまい、空調を利かせた空間を作ることはそんなに難しくはないのですが、それではこの緑を前に教室を構える意味も半減してしまうと考えました。
難点は更衣室でした。布をうまく使えば風が通るだろうと、舞台芸術家にお願いして、カーテンと布をうまく組み合わせて、安心して着替えられるけれども、風通しのよい空間を設計しています。布はできるだけ天然の素材を使って、リラックスできるようにしました。
どのような方に多く来ていただけるのかは、正直まだ見えないところです。お昼を近所でとっていると、事務系のOLさんを多く目にします。おそらくエアコンで寒いのでしょう、カーディガンを羽織り、お財布を片手に連れ立ってランチをしています。あるいは、ご近所の主婦の方にも来ていただけるかもしれません。男性や高齢者の方にも是非来ていただきたい。そんな欲張りをしていると、すぐにデザインというものはその方向性を失いがちです。それでもどんな人にもある毎日の生活から、緑が見渡せて、自然の風が通り抜け、ゆったりと身体を動かし、深い呼吸でリラックスできる、そんな非日常への扉になれるよう、大事にしたいのが更衣室だったのでした。
どんな出来上がりになるのか、そしてどんな評価をもらえるのか、どきどきしています。
|